Center line 〜センターライン〜
元読売巨人軍・井端弘和氏が、野球にまつわる様々なテーマを、独自の目線で深く語るYouTubeチャンネル『イバTV』を配信中! コラム 〜センターライン〜 では『イバTV』の未公開部分を深堀りし、テーマに沿ってお届けします。
[特別編]
坂本勇人、2000本安打へ。優勝の行方を占う後半戦が幕を開ける!
Posted 2020.08.28

坂本勇人、2000本安打へ捲土重来のカウントアップ!

新型コロナウイルスの影響下、度重なる延期を経て6月19日に開幕を迎えた今シーズンのプロ野球。例年より23試合少ない120試合制の過密スケジュールで熱戦が繰り広げられる中、スタートダッシュに成功し、首位で後半戦を迎えるのが、リーグ連覇&日本一奪還へと邁進するジャイアンツだ。

開幕から不動の4番として存在感を発揮する岡本和真は、8月21日終了時点、本塁打と打点でリーグトップ。7月には6度の決勝打を放ち、得点圏打率4割を超えるなど勝負強さも抜群だ。投げてはエース菅野智之が圧巻の完封ショー。8月18日の阪神戦では今季3度目の完封で相手打線を3安打にねじ伏せ、ジャイアンツとしては1990年の斎藤雅樹以来、30年ぶりとなる開幕8連勝を飾った。

さらに今季、2000本安打の偉大な記録がかかっているのが頼れるキャプテン坂本勇人だ。昨シーズンは5年ぶりに全試合出場を果たし、2年連続3割越えの打率.312をマーク。遊撃手として史上2人目となる40本塁打のキャリアハイを達成し、念願のリーグ優勝へチームを導いた。

卓越した打撃力で球界の顔となった坂本の通算安打数は、昨シーズン終了時点で1884本。31歳で迎えた今シーズンは残り116本からスタートし、“初代・安打製造機”榎本喜八が1968年に31歳7ヶ月で達成して以来、破られていない最年少2000本安打への記録更新もかかっていた。最年少記録の更新に関しては3ヶ月の開幕延期によって幻となってしまったが、今シーズン中に2000本安打に到達すれば、張本勲(32歳2ヶ月)を抜く歴代2位のスピード記録。2000本安打の達成自体、NPB史上53人目。ジャイアンツでは川上哲治、長嶋茂雄、王貞治、柴田勲、阿部慎之助といったレジェンドに継ぐ6人目の偉業となる。

坂本の記録達成を期すべく、現在、東京ドームでは22番ゲート前に等身大パネルを設置し、「HAYATO-METER」で安打数をカウントアップ。球団公式ツイッターでも安打が1本出るたびに著名人や子供たちが動画メッセージを送るなど、球団とファンが一体となった応援企画が盛り上がっている。

だが、自主トレ中の1月、宮崎キャンプ中の2月と、立て続けにインフルエンザに罹患するという不運に見舞われた坂本は、開幕2週間前のPCR検査でも微量ながら新型コロナウイルスの陽性反応が出たため10日間の入院。思うように実戦感覚が養えず、シーズン序盤から打撃不振が続いているのが気がかりなところだ。

「やはり開幕前からの影響と、その疲れがあると思います。体にキレがなく、ちょっとだるそうな印象を受けますよね」
前半戦の坂本をそう振り返るのは、2018年までジャイアンツの内野守備走塁コーチとして坂本を見守り、昨年のプレミア12でも戦いを共にした井端弘和氏だ。
「とはいえ、坂本選手が打率2割前半でいること自体おかしいわけで、逆にこのままの打率で終わるようなことはないと思います。長いことレギュラーでやってるわけだからコンディションを戻すという点では大丈夫でしょうし、終わって見たら2割8分くらいは打ってるんじゃないでしょうか。現在のジャイアンツは坂本や丸が調子を落としても適材適所で選手をやりくりし、相手より1点多く取る野球ができていますが、キーマンはやはり坂本。坂本がどれだけ打ってくるかが後半戦を占う重要なカギです」

首位で9月の連戦に臨むジャイアンツ! 優勝の行方は?

首位ジャイアンツの9月からの対戦は、Aクラスの常連ベイスターズとの負けられない3連戦からスタートする。さらに翌4日から甲子園へ移動してのタイガース戦は、7日月曜までの4連戦が組まれており、8日からのナゴヤドームでの対ドラゴンズ3連戦、11日から東京ドームへ戻っての対スワローズ3連戦と合わせると、大阪、名古屋の移動を含む、実に13連戦という死の長期連戦が待ち受けている。9月中、セ・リーグの試合がない日はたったの3日。残暑の疲れとも戦いながら、連戦をいかに乗り切るかが課題となるだろう。

ベイスターズは筒香嘉智がMLBへ移籍したが、その後継者として頭角を現す新4番・佐野恵太の勝負強さには要注意。序盤に出遅れたタイガースは、7月28日に2位タイにまで盛り返したが、8月は白星が先行せず停滞。開幕カードで3戦零封とタイガースを寄せ付けず、以降10試合で8勝2敗と圧倒しているジャイアンツとすれば、4日から敵地に乗り込む4連戦もガッチリ勝っておきたいところだ。

世代交代の真っただ中にあるドラゴンズは、投手・野手ともに若手の有望株が成長しつつあり、勢いを付けるような負け方はしたくない。今シーズンのジャイアンツは、唯一ドラゴンズに負け越しているため、8日からの名古屋3連戦はひとつの正念場。2位以下に差をつけているとはいえ、井端氏がキーマンとする坂本が調子を取り戻し、坂本・丸・岡本のオーダーが機能しなくては、ジャイアンツのペナント争いもそうラクにはいかないだろう。15日からはタイガース、ベイスターズ、カープとの9連戦も控えている。

シーズン後半戦の見どころと、気になる優勝への行方について、井端氏は次のように語る。
「ジャイアンツがこのまま優勝する可能性は十分あると思いますよ。菅野があれだけ勝っていて戸郷もいる。2人の貯金でトップを走ってますから。それ以外の投手が少しずつ勝ち数を伸ばしてさらに貯金を作ろうという雰囲気ができれば、逃げられるのではないでしょうか」

山口俊が抜け、デラロサが離脱するなど、不安視されたジャイアンツの投手陣だが、田口麗斗やサンチェスが先発ローテの役割を果たし、プロ2年目の戸郷翔征が躍動。さらにプロ初勝利を上げた大江竜聖や、楽天から移籍後12試合無失点で全球団からホールドを記録した高梨雄平ら、中継ぎで汗をかくバイプレーヤーの奮闘も大きい。打線はチーム打率は.250ながら、得点数はリーグ最多。原監督の「支配下選手ワンチームで乗り切る」という采配が功を奏している。
「野手も松原聖弥が活躍したりと、勝ちゲームで新戦力が機能していますよね。そこに中軸が復調すれば、優勝への道のりも盤石になる。ジャイアンツを脅かすとすれば、ベイスターズか、ジャイアンツに2カード連続で勝ち越しているドラゴンズでしょうが、ベイスターズやドラゴンズは同一カード3連勝や5連勝、6連勝といった大勝ちがない。いくら2勝1敗での勝ち越しを続けても、1度3連敗を食らってしまえばタイになっちゃいますよね。一方、ジャイアンツはドラゴンズに1勝2敗で負け越しても、次のカードで3連勝したりするわけで、併せて考えると4勝2敗で勝ち越している。『3連敗しなければいい』といった姿勢で臨んで、結果、勝てているのが、今のジャイアンツの強さです」

井端氏が指摘するように、効率よく白星を先行させるジャイアンツが独走態勢へ突き進むのか、あるいはベイスターズやドラゴンズが追撃の狼煙を上げるのか。史上最も過酷なペナントレースは、いよいよ後半戦へ突入する。

(了)/文・伊勢洋平